西暦2780年───
人類の科学力は途方もなく進歩したが、その一方でさまざまな問題も生じてきた。
そのうちのひとつが寿命である。
科学力によって人はしななくなった。いや、しぬことができなくなったのだ。もはやじさつしようとしない限り、しぬことはできない。
しかしそのじさつも、必ずうまくいくという保証もない上に、自分の意思に関係なく身内の者が生き返らせてしまうケースもある。
原因はさらに進化した無重力空間自動発生装置、通称ABMだ。
従来のABMは自身の周囲に無重力空間を作り出し、それによって自在に飛行できるだけの代物であった。
ABMが完成し、一般向けに販売され始めたのが2623年頃。
それからしばらくは他の製品の開発もあり、販売当初のまま売られ続け、改良の余地はないと思われていたのだが───
しかしある事故をきっかけに製品改良に目を向けられ、安全性も兼ね備えたABM開発に取り組みだ下のだ。
そして2702年、ABMカスタムという新製品が、完成と同時に一般向けに販売された。
従来通り無重力空間を産み出すという点に変わりはないが、安全性を考え、装着した人間を守る機能に長けている。
これまでのようにまずは装着し、スイッチを入れると無重力空間が発生する。さらにその空間内は酸素に満ち溢れていて、水中でも呼吸することができる。
さらに装着した人間に危険が迫ると、その危険をいち早く察知し、装着した人間の周囲にバリアーを張り、危険を回避する。
例えば頭上から鉄骨が落下─とか、背後から暴走したトラックが─、などの危険が生じた場合、それらをバリアーで回避してしまえるのだ。
値段は1個10,000円、使用し始めてきっかり1年後に壊れる。