No.0 07/02/07(水) 21:47:19

深緑の中でA

一会
続きです(^^ゞ
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  • No.1  07/02/07(水) 22:07:09
    第十三回

    僕はその存在感に圧倒され、
    一時見とれていた。
    っ!
    人だっ!

    今、この現状で人に会えたという事に気付く迄しばらく時間がかかった

    『ぉ………』
    声をだそうと思った瞬間
    僕は不気味な感覚を憶えた……

    こんな場所に人が居るわけがない!
    いや、自分が居るのだから他の誰かが居ても
    おかしくないのだが、

    何故かその女は人ではない

    僕の中のなにかが感じ取ったのだ

    どうするべきなのか…?
  • No.2  07/02/10(土) 23:29:37
    第十四回
    その女はただ立っていた

    なにも言わない
    なにもしない

    ただ僕を見つめている

    その姿は
    艶麗で
    この世のモノとは思えないほどに

    まさに魔女の様だ
    いや、魔女に違いない

    僕は彼女から離れるため
    歩く

    走る力はもうない

    歩く、歩く、
    もう、あてなど無い

    でも進むしかない
  • No.3  07/02/17(土) 09:05:36
    第十五回

    森の中で
    自分の足音だけが響く
    追ってくる気配はない

    ……

    後ろを振り返ると
    女の姿が消えていた

    見回したが
    何処にも見当たらない


    やはり女は人ではない
    捜すのを止め
    前方に向きなおした瞬間

    視野に忽然と女は姿を表したのだ

    何度も…何度も…
    女は一定の距離を保って
    現れた
    まるで逃げ惑う僕を嘲笑う様に



    気を失っては目醒め
    歩く

    何度繰り返すのか
    何度繰り返したのか
    飲まず食わずで彷徨い続けて
    もう、
    精神的にも肉体的にも
    限界だ

    もう、歩けない
  • No.4  07/02/20(火) 00:21:40
    第十六回

    僕がいったい何をしたのか

    何故、僕がこんな目にあわなければならないのか…

    もぅ、此処から抜け出せるとは思えない
    早く楽になりたい……



    僕はゆっくりとこの狂気に呑まれるしかないのか


    僕は限界の中、自我を保っている
    それはなにものにも例えがたい苦痛

    いつのまにか
    僕の手に鍵が握られていた

    その先には小さなキーホルダーの折畳みナイフ

    これは最後の神のほどこしか
    コレで僕は楽になれる

    僕はナイフを取出し
    そして……

    その瞬間

    『アノマジョヲコロセ』

    なんなんだろう?
    誰かに言われた様で
    自分で思いついた様な

    『スベテハアノマジョノセイダ』

    なんなんだろう?
    突然に納得した
    あの魔女を消せば
    此処から抜け出せる

    そう思えた
  • No.5  07/02/23(金) 00:53:00
    第十七回
    赤い服

    緑の中にそれは
    異様なまでに浮き出ている

    美しく、妖しく

    その女はまた僕の前に現われた
    何時もは逃げていたが
    今は違う
    その女に向って
    最後の気力を振り絞る様にザッ…ザッ…ザッ

    思いの外簡単にその女の前まで行き着けた

    女は微動だにせず
    こちらを観ているだけだった………

    グス………

    嫌な感覚が手に伝わってくる
    暖かなモノが手に

    グ…‥ドサッ!

    ナイフが女の身体から抜けると
    女は地面に倒れこんだ

    すると!どうだろぅ
    回りの景色が
    崩れ落ちだした

    まるで完成したパズルのピースを振り落とす様に

    頭が揺れる
    僕もその場に倒れこんだ

    薄れゆく意識の中で

    僕は願う
    次に目覚めるときは
    此処から抜け出せている事を…
  • No.6  07/02/26(月) 19:27:22
    第十八回

    ……

    眩しい…

    ぼんやりと
    僕は世界に戻り始めた

    蛍光灯と白い天井

    白の服の女……

    ぼんやりとまた微睡みに入っていく




    完全に意識を取り戻したのはそれから
    しばらくたってからだった

    ベットの上
    どうやら
    此処は病院らしい
    目覚めてすぐ
    看護師が外に出ていった

    たぶん、医者を呼びにいったのだろう

    現実だ!
    いや、
    現実らしい現実
    日常的な場所とでも言えばいいのか

    非現実的な
    あそこから抜け出せたらしい
    あれがなんだったのか、
    今は何時なのか、
    なぜ病院に居るのか、

    考えるのはまだいい。
    喜びと安心感を
    僕は噛み締めた

  • No.7  07/03/05(月) 23:20:19
    第十九回
    しばらくすると
    医者らしい白衣の男と
    それに続いて
    スーツ姿の男が入ってきた

    白衣の男がある程度
    僕を診察してから

    二人の男と話をしている

    嫌な感じが僕を襲う…

    あの二人の男達はなんなんだろうか?
    もしかしてあの森の関係者ではないか?

    やっと抜け出せた悪夢がまた蘇る

    話が終わったらしく
    白衣の男は外に出ていき
    二人の男が
    僕に近づいてきた

    僕に緊張が走る
  • No.8  07/03/13(火) 01:13:02
    第二十回

    サラリーマン風の男
    一人は中年で
    気難しそうな感じだ
    もう一人は
    自分より若いか同年代ぐらいの
    なんだか頼りなさげな男

    僕は唾を飲み込んだ

    ……
    『初めまして、ワタシはこういう者です』

    中年の男は懐からなにかを取り出した

    警察手帳だ
    ドラマ等で観たことはあるが
    初めて本物を観た

    笹山 孝一

    普通はコレを観たら
    緊張するのだろうけど
    僕は
    逆にホッとした

    今居るのは
    現実的な世界
    此処は病院
    彼等は警察

    あれはなんだか、
    まだわからないが

    今は認識できる世界に居る事は確かだ

    『小林です』
    もう一人の若い男も手帳を取り出した

    小林 洋一
  • No.9  07/03/17(土) 02:24:07
    第二十一回

    笹山『お加減は如何ですか?』

    僕『…えぇ、大丈夫です』
    人と会話をしたのが
    何年ぶりかの様だ

    なんだか嬉しくなった
    それが顔にでていたのか
    刑事は
    少し戸惑った表情を見せたが
    すぐに真顔になり
    話を進めだした

    笹山『少々、質問してもよろしいですか?』

    僕『‥はい』

    笹山『何故、此処に居るかわかりますか?』

    核心を突いた質問だ
    僕はまったく理解できていない。
    こっちが知りたい

    僕『…わかりません』